□ 夏の桜 □

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 写真 / 構成
00:とある少年の不定期な日記。

■6月31日
学校は憂鬱だ。
嫌だな、行きたくないな。
早く夏休みにならないかな。

■7月1日
母親に追い出されて結局学校に行ってしまった。
今日こそは学校に行かないようにしていたのに、
行かなきゃならない環境だった。
遅刻してしまった。
学校にいる時間をより少なくさせたかったからだ。

■7月3日
教室に居たくないので今日もギリギリの時間に学校に行った。
そうしたら教室の机がなくなっていた。
先生がクラスメートを問いただした。
誰も、答えなかった。
机は結局ベランダ側に面している中庭に捨てられていた。

■7月4日
今日は休みだ。
一日中家に居れる。
誰にも怒られない。
土日は僕の自由の王国だった。

■7月7日
学校に行ったら、机はあったんだけれど中身が無かった。
ロッカーの中がぐしゃぐしゃにされていた。
移動教室から帰ってきたとき、消しゴムのかすが机の上を埋め尽くしていた。
皆、笑った。

■7月8日
学級委員でもないのになぜかリーダーシップがあるヒタチ リョウタが僕に話しかけてきた。
「給食のとき、どうして席をくっつけないの?」
その心配そうな笑顔を見て、僕に力があればな、と思った。
力があれば、ぶん殴ってやるのに。

■7月11日
歳が離れた兄が家に帰って来ていた。
家に帰ってもパソコンばっかりやっている僕を見て、鼻で笑った。
あんな奴、大きらいだ。

■7月12日
兄がお前はもう中3なんだから塾ぐらい行けとけしかけてくる。
僕は部屋の鍵を閉めてもう二度と兄の顔を見ないようにした。
自分の優秀さを鼻にかけて比べる兄にうんざりだ。

■7月13日
母親が言うには兄はあと3日ぐらい家に泊まるそうだ。
アイツは遠くの有名大学の4年で、インターンだかなんだかって言うものがあるとかなんとか・・・よくわからない。
医学部なんだ。
お前が死ねばいいのに。

■7月15日
ワカサ ダイゴロウが僕の筆箱を掴むなり、例の中庭に投げた。
ヤマシロ コウジが油性ペンを持って僕のバッグの内側に落書きをした。
タンバ サチコが僕の丸々と太った体系を馬鹿にした。
エチゼン ミユキが僕の長く伸びきった前髪にハサミを入れようとした。
誰も、止めなかった。

■7月17日
今日はカガ タカトシと一緒に帰った。
カガ タカトシとは何かと話があう。
だけどアイツは僕を助けてくれない。
皆が敵なんだ。
ああ、早く夏休みにならないかな。

■7月20日
学校に行ったら、机の上に白い菊の花が入った花瓶が置いてあった。
今日は遅刻して2時間目の途中から学校に行ったから、朝の会で先生に見られなかったらしい。
僕は、死んだ。
クラスメートの中での僕は、今日、死んだ。





少年の日記はこの日を境にぷつりと途切れた。





inserted by FC2 system